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『新プラトン主義を学ぶ人のために』
水地宗明・山口義久・堀江聡編著
世界思想社 2014年5月(第二刷2018年8月)

専門に研究している哲学分野の専門書が再版増刷された。まずは、目次と執筆者をご覧いただきたい。

第1章:新プラトン主義のアウトライン(水地宗明)
展開α:プラトン哲学の徹底と逸脱(納富信留)
第2章:アンモニオス・サッカス(大内和正)
展開β:古典サーンキヤの世界創造の構図(齋藤直樹)
第3章:プロティノス
第1節:生涯と著作(水地宗明)
第2節:一者(水地宗明)
第3節:知性原理(山口義久)
第4節:魂、知性(田子多津子)
展開γ:西田哲学(板橋勇仁)
第4章:ポリフュリオス(山田道夫)
展開δ:ストア哲学(近藤智彦)
第5章:イアンブリコス(堀江聡)
展開ε:アリストテレス註解と新プラトン主義(中畑正志)
第6章:プロクロス(堀江聡&西村洋平)
展開ζ:アレクサンドリアのアンモニオス(水落健治)
第7章:ダマスキオス(國方栄二)
展開η:シンプリキオス(西村洋平)
展開θ:フィロポノス(中村公博)
第8章:中世
第1節:アウグスティヌス
A:新プラトン主義との出会いをめぐって(松崎一平)
B:新プラトン主義とキリスト教創造論(河野一典)
展開ι:カッパドキア教父(土橋茂樹)
第2節:ディオニュシオス・アレオパギテース(熊田陽一郎)
展開κ:ビザンツ正教思想における新プラトン主義(袴田玲)
展開λ:サン・ドニ修道院長シュジェールの美と光(高野禎子)
展開μ:トマス・アクィナスとイデア論(小浜善信)
第3節:エックハルト――始原への探究――(山崎達也)
第9章:近世から現代まで
第1節:ルネサンス(加藤守道)
展開ν:近世のスペイン神秘主義(鶴岡賀雄)
展開ξ:フィヒテ・シェリング(伊藤功)
第2節:ヘーゲルから現代へ――ヘーゲル『哲学史講義』新版「新
プラトン主義哲学」の章に即して――(山口誠一)
展開:レヴィナス・デリダ(小手川正二郎)
新プラトン主義関連略年表(金澤修)
あとがき(山口義久)
人名・著作名索引

4年前に刊行された当初、上掲書は、目下244冊ある世界思想社のヒット『・・・を学ぶ人のために』シリーズのなかでも、2番目の売上げを記録していた。それでも、この夏、900部増刷の連絡を受けたときは、驚きと歓びの感懐を禁じえなかった。

紙媒体の書籍離れの趨勢は言わずもがな、いわんや文系の直球ど真ん中の哲学書に需要がいまだあるのか。たしかに類書はない。

新プラトン主義とは、典型にせよ反面教師にせよ形而上学の代表格であるにも拘らず、原典から精確に理解している研究者は、まだまだ少ない。勢い、信頼に足る研究書が存在しなかった。

3人編者が名を連ねているが、実質的に編集(外科手術を)し、徹底的な校正を行ったのは私だった。もとは四半世紀前、新プラトン主義協会をともに立ち上げた金沢大学の岡崎文明名誉教授が編者であったのだが、彼が私に禅譲したのをきっかけに、同書の構成に大幅な手を加えさせてもらった。

全9章、執筆者総勢13人だったのを、コラムの体裁の「展開」枠15人を章の合間に埋め込んだのだ。「展開」が京大の中畑正志教授、慶應から東大に移った納富信留教授初め、各章の執筆者に劣らぬ強力な陣容と、実際の執筆内容となったことは、読む人が読めば納得されると思う。

お願いしたのは私の友人知人たちであって、もちろん個別に執筆を口説き落としたわけである。また、専門から外れる方々とは、何度も情報・意見交換を行った末に脱稿したものもある。畏友というか、共にワイン3本を歓しむ齋藤直樹氏は、マールブルク大で学位を取った仏教学の俊英である。

サーンキヤ哲学をプロティノスと比較するという斬新な試みは「展開」枠にも拘らず、「章」立てのものより紙幅は超えてしまった。

 

プラトン自体にない新プラトン主義の「新」は何を意味するのかと言えば、①に<体系化>で、形而上学と言える宇宙の全貌が提示されることであり、②に<アリストテレス哲学との総合>で、これは新プラトン主義がアリストテレスへの通暁なしには正確に理解されないことを意味する。③に、これこそ自他ともに認める真骨頂であるが、<神秘哲学化>である。

「神との合一」と聴いてアレルギー反応を起こす向きは、私の経験から、老若男女、専門家であると否と、国籍を問わない。南国の果実ドリアンを好きな人はこよなく愛するが、嫌いな人には何を言っても無駄、の如しである。

ベルリンのアリストテレス・アルヒーフで修行した私にとって、アリストテレスは研究の出発点であり礎という意味で大きい存在であるが、その『形而上学』ラムダ巻で展開された神学は、20代の私にとって謂わば「寸止め空手」で隔靴掻痒の感は否めなかった。

そこで、ミュンヘンのバイアーヴァルテス教授の許に移り、神語りをふんだんに行う「極真空手」たるプロティノス原典900頁通読の苦しくも愉しい行に挑むことになる。

 

日常のなかにある神秘ではなく、日常化されない神秘がある予感がする。それは日常の神秘を非神秘化するものでもあるが、それ自身は非神秘化されないものである。いや、それ自身、非神秘化されないのであるから、日常の神秘も非神秘も神秘として保全するものである。この非神秘化されないものを語りたいと思う。


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