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洋々LABO > 大学・学部別 > 慶應SFC > SFC授業紹介:「人工知能論」

はじめに

 今回は、SFCの諏訪正樹教授が教鞭をとる「人工知能論」という授業をご紹介します。

 まず、「人工知能論」と聞いて、皆さんはどのような授業を想像するでしょうか?

 ・人工知能の仕組みについて学べる?
 ・その応用の仕方を学べる?
 ・プログラミングの方法を学べる?
 ・最先端の人工知能研究に触れられる?

 上のことは筆者がこの授業を履修する前にこの授業に期待していたことですが、これをお読みの皆さんの中にも、筆者と似たことを想像している方が多いのではないでしょうか。

 しかし、この諏訪教授の「人工知能論」で取り扱うことは上のような人工知能のシステムについてだけではありません。私たちの感覚を言語化することがいかに難しいことなのかを身をもって体験するという授業なのです。

 ですので、文理を問わず楽しむことのできる授業ですし、“人工知能”という硬い枠にとらわれず様々な分野に応用可能な能力を身に付けることができます。

授業概要

 改めてこの授業は、私たちが日常生活で当然のように行なっている判断行動を振り返り、人工知能・AIにそれを教えるためにことばにする授業です。
 つまり、AIのシステムやそのプログラミング方法についてのスキルを身につける授業ではないということです。  

「人工知能」と「ことば」

 『人工知能論』という名前の授業なのになぜ私たちの日常生活を振り返ったり、それを「ことば」にしたりする必要があるのかと不思議に思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、人工知能を応用する上で、私たちの日常を言語化することは大変重要なことなのです。

プログラミングとは何か?

 まず人工知能の説明の前に、プログラミングとは何かを軽く説明します。

 プログラミングとは、人間がコンピューターに指示を与えることです。例えば、Aさんは自分の会社のホームページを作っています。彼の頭の中には“こういうホームページにしたい”という理想がありますよね?その理想をコンピューターに伝えるために、「ここを青色にしてほしい」、「ここにこのリンクを貼ってほしい」など要求します。

 しかし当然ですが、コンピューターは私たちが使う言葉は理解できません。ですので、私たちが言葉にして伝えたいことを数式にして伝えます。“プログラミング”と聞くと、大量のアルファベットや数字を思い浮かべる人が多いのは、そのためです。

人工知能が目指すこととは?

 しかしプログラミングですと、私たちが毎回コンピューターに指示を出さないと彼らは動いてくれません。同時にコンピューターは指示されたことしかやらないので、柔軟性に欠けます。
 
 例えば上の例の続きで説明すると、Aさんはホームページの背景の色を青色に決めました。そして、自分の子会社のホームページにリンクをクリックしたらすぐ飛べるように自分のホームページにリンクを貼り付けました。しかし完成したホームページを見てみると、貼り付けたリンクが見当たりません。実は、背景の青色と、貼り付けたリンクの青色(通常ホームページにリンクが載せてある場合、青色ですよね?)が一体化して見えにくくなっていたのです。

 こういう場合、私たちならリンクの色を変えたり、背景の青色を薄くしたりして、リンクの存在を分かりやすくするために柔軟に対応します。コンピューターが自分でそのような柔軟な対応をしてくれたらとても有難い。それは、コンピューター自身が自分で考え、行動するということです。これが人工知能研究の究極の目標だと言っても良いでしょう。

人工知能と柔軟性

柔軟に行動する難しさ

 柔軟に行動するのが当然の我々からすると、なぜコンピューターがそんな小さいことも考えられないのか不思議に思う人もいるかもしれません。ちなみに、筆者はずっとそう思っていました。

 しかし、私たちは「どのように」考え、「いかにして」判断を下しているのでしょうか?そのメカニズムが解明されていない現在では、コンピューターにそのメカニズムを組み込むことができないため、自分の頭で考えるコンピューターを作ることは困難なのです。

「ことば」から見つける柔軟性

 柔軟な判断・行動をとることが難しいことは感じて頂けたと思いますが、だからと言って「じゃあ、できないね」で終わってしまっては研究になりません。ですので、ここで「ことば」が大切になってくるのです!

 この授業では、我々の頭の中・心の中を「ことば」にしてアウトプットします。つまり、とにかく柔軟に対応できた日常を思い出し、それを脳裏で再生しながら、何をどう考えて・感じて、自分がそのような行動をしたのかを考察します。そして、考察したことをディスカッションで共有したり、自分のノートに書き出したりします。この作業を繰り返すことで、これまで曖昧に選択していた自分の言動に論理の流れを見いだすことができるようになります。

 例えば、友達に自分がさっき買ったチョコレートをお裾分けするという行動を例に取ります。別にあげる必要はないので、私が友達にチョコをあげる行動は気遣いができる、柔軟な行動だと言えるでしょう。しかしなぜ私はチョコをあげたのか。

 ・ちょうどお昼ご飯を友達が食べた後だった
 ・チョコを買うのに付き合ってくれた
 ・お菓子はお裾分けしないと気まずいという文化

など色々理由はあります。そして、上の3つを自分が考えた順に並べれば、ザックリとはしてますが、私の言動に論理の流れを見つけ出すことができたことになります。

 今回は一例だけですが、もしこのような論理の流れのパターンがたくさんあったらどうなるでしょう?そこには何か我々が下す判断に無意識の規則性があるかもしれません。その規則性をコンピューターに組み込むことができたら、我々のように柔軟な頭を備えたコンピューターが開発できるかもしれませんよね。

 まとめると、「ことば」にすることで、我々の判断・行動を具体化できます。具体化されたものであれば、プログラミングすることができる。そのプログラムを用いれば自ら考える人工知能が生み出されるかもしれないのです。
 タイトルにあった「人工知能」と「ことば」の繋がりを少し感じて頂けたでしょうか?

授業で扱った例

 上の授業概要で大まかにこの「人工知能論」の授業で何を目指し、何をしているのか掴んで頂けたと思います。

 しかし、それでも実際に授業で何をしているのか具体的な所を想像するのは難しいのではないでしょうか。ですので、ここでは実際に授業で扱った事例をご紹介します!

自動運転

 人工知能の応用例といえば、真っ先に自動運転が思いつきますよね。「時代は自動運転」と盛んに言われています。

 しかし、これまで述べてきた「ことばと人工知能」という観点から自動運転を考えてみると、今までとは違った世界が見えてくるでしょう。

 ここでは、実際に自動運転に関してこの授業で取り扱った内容を簡単にご紹介します!

フレーム問題

 フレーム問題とは、私たち人間が知覚している常識を全てプログラミングすることは現状不可能という問題です。自動運転で言えば、運転する際に必要な認識力・判断力は多岐に渡りすぎて全て記述することはほぼ不可能ということです。

 例えば、自分が運転席にいて車を運転している状況を想像してみてください。その際に皆さんは“何を”意識していますか?信号・スピード・対向車・歩行者、、、など私たちの意識に上る事柄だけでも沢山あります。

 しかし、実際それだけでしょうか?例えば雨の日、傘をさしている小学生が車道の近くを歩いていたら、“私たちの常識”では速度を落としますよね。そうでなければ、小学生は車の風で傘ごと飛ばされてしまうかもしれません。
 逆にあぜ道を走っていて、道端のススキが風に揺られて車の前に突然はみ出してきても、我々は無視してそのまま進みます。

 この2つの例の中で我々は何を意識しているのでしょうか?私たちは当然のように、「小学生は体重が軽い」・「傘は飛ばされやすい」・「ススキは柔らかいから車に当たっても無害」など車の運転に必要ないはずの常識まで持ち出しながら、運転時様々な状況を判断しているのです。

 つまり、技術が整えば自動運転が可能になるわけではないのです。私たちの柔軟性の謎を解明しない限り、人工知能に運転方法を教えることはできない。「ことば」というのは人工知能の開発と密接に結びついているのです。

授業の進め方

 実際にこの授業を履修した筆者がこの授業がどのように進められるのかご紹介します!シラバスに書かれていない情報も手に入るかもしれません。

“SFC”らしい授業

 基本的には講義形式で授業は進められます。しかし、それは学生に一定の共通理解を得てもらうためであり、授業が進むほど“SFCらしい”、アクティブな授業になっていきます。

 具体的には、授業内でディスカッションしたり、グループワークで課題を行ったりします。ディスカッションした内容は、SFC—SFS(SFC関係者用のコミュニケーション支援システム)の中にある「ディスカッションエリア」に書き込みます。それは、教授と学生が授業内外でコミュニケーションを取るためのシステムです。そして、ディスカッションエリアに書かれている内容を踏まえて、授業が進められます。

 また、冒頭に「基本的には講義形式」と申し上げましたが、本当にただ受け身の講義ではなく、教授が随時マイクを回しながら学生の声を拾いながら授業が進められます。

諏訪正樹教授ってどんな人?

略歴

【学歴】 
東京大学工学部卒業(1984年) 
東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(1986年) 
同 博士課程修了(1989年) 

【主な前職】 
(株)日立製作所基礎研究所、 
オーストラリアシドニー大学建築デザイン学科主任研究員(Senior Researcher)、 
中京大学情報理工学部教授 

専門分野

 ・認知科学
 ・人工知能
 ・コミュニケーションデザイン
 ・デザインサイエンス
 

担当授業

 ・人工知能論
 ・学びのデザインワークショップ
 ・身体知論
 ・構成的認知論
 ・先端研究(CB)
 ・修士研究会
 ・研究会(身体を考え、知をデザインする生活)
 ・アカデミックプロジェクト(「身体化デザイン」プログラム)
   
  参照
  ・教員紹介ページ
   https://vu.sfc.keio.ac.jp/faculty_profile/cgi/f_profile.cgi?id=21c9bc4e5d385a53
  ・諏訪研究会公式ホームページ
   http://metacog.jp

この授業を受けてみて

「人工知能論」をSFCで履修した筆者が、この授業に対する率直な感想を述べます!

履修理由

筆者がこの授業を履修しようと思ったきっかけは、「人工知能ってなんか流行ってるし、教養として知っておきたいな」という程度の漠然とした理由でした。

ちなみに筆者はこの時、この授業では人工知能のシステムについて学ぶものだと思っていました、、、。

授業を受ける中で

 授業の冒頭で教授が「この授業では人工知能の理系的な面を学ぶのではありません」と言われ、少し残念に思いました。

 しかし授業を受けるほど、どんどん授業が面白くなっていきました。私たちの“当然”ってこんなに曖昧で抽象的なのかと身を以て感じたからです。

 当然すぎて「なぜ・いかにして」私がそう判断・行動したのか言葉で説明できないことに困惑しました。そして困惑と同時に、私がまだわからない世界があるということにワクワクしました。

授業が終わって

 私がこの授業で得たことは大きく2つあります。

 1つ目は、人工知能が怖くなくなったことです。これまでは知識がなかったため、「このままではAIに負けてしまう」という世論に流され、不安に感じていました。
 しかし、人工知能の発達は理系的な技術面だけでは進まないと学び、そういった漠然とした不安はなくなりました。

 2つ目は、自分自身とよく向き合えたことです。
 私が「なぜそう行動したのか」を振り返り、それを言葉にすることは自己分析に近い作業です。こんなに自分の知らない自分がいるのかと改めて驚きました。

まとめ

 これまでの内容をまとめると、この授業は
  ・システムについても取り上げられるが、それを深く学ぶ授業ではない
  ・それよりも私たちの体感常識「ことば」にする難しさを体感する授業
  ・なので、文理や学生の専門を問わず学ぶものが大きい
ということです。

 ただ人工知能に関する知識だけを身につけるのではないため、授業で得たものを違う分野に転用したり、自分の研究専門に取り入れたりすることができるでしょう。そのような意味では、学問の横断を大切にする“SFCらしい”授業だと言えると思います。

 SFCで学ぶ機会がありましたら、是非履修してみてくださいね!

慶應義塾大学環境情報学部3年の光延いのりです。

高校時代に1年間フィンランドに留学していた経験を生かし、SFCにAO入試で入学しました。洋々でメンターをやりながら、SFCの魅力を伝える記事も執筆しています。

SFCでは、ドイツ語を学びながら日本史・日本政治のゼミで勉強しています。

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