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洋々LABO > インタビュー > 大学インタビュー > 立命館アジア太平洋大学入試課インタビュー 育てたいのは「半径50センチの世界を変えられる人」

89の国と地域から学生を迎え入れ、2人に1人は外国籍(*1)――そんな「真のグローバル体制」を実現している大学がある。立命館大学の姉妹校、立命館アジア太平洋大学、通称「APU」だ。

「グローバル化」という言葉はここ数十年で世に定着したものの、その体現は非常に難しい。何を以てグローバル化とするのか、グローバルとはどのような状態を指すのか、その定義が難しいからだ。

全学生数、5826名。うち、国内学生は2920名、国際学生は2906名。アジア中心として、アフリカや中東、中南米など、APUには世界中から学生が集う。開学から20年足らずで、同校はどのようにしてこうした環境を作り上げたのだろうか? 洋々編集部がその内実に迫った。

(*1) 2018年11月11日現在 国際学生(留学生)、2952名。国内学生、2877名。

正規学生の多国籍性は、世界トップクラス

――本日はよろしくお願いします。まずは、APU開学の意図について教えてください。「アジア太平洋」というスコープを想定しているのはなぜなのでしょうか?

入試課担当・伊藤氏(以下、敬称略):APUの構想が初めて立ち上がったのが1995年。2000年頃に北米やパクス・アメリカーナの時代が終わるだろうという予想から、次に覇権を握るのはどこか?と考えたとき、アジア太平洋の時代が来るのではないか、という考えから設立されました。

太平洋って広いんですよ。アメリカやオセアニアにも面している。なので、「アジア太平洋にスコープを絞っている」というよりは、「アジア太平洋を中心として全世界の学生を迎え入れている」という言い方のほうが正しい。学生を国籍別で見ると、確かにアジア圏が最も多いですが、世界中から学生が集まり、卒業後は世界中に散らばっていきます。

――世界規模で見ても、ここまで多様な国籍の学生を正規学生として迎え入れている大学は珍しいですよね。

伊藤:多様性に関して言えば、間違いなくトップクラスですね。イギリスで英国籍以外の学生を40%前後受け入れている大学がありますが、それは短期留学生を含む数字です。

この大学はインターナショナルスクールとほぼ変わりません。外国籍の学生は別に日本で就職をしたいからここで勉強するわけじゃないし、卒業後に一定期間日本で働いて、それから先は全く別の国々を転々とするのはのは珍しくありません。とにかく、学内における国境の垣根は信じられないほど低いですね。無いに等しいです。

――これほどまでに多様な国籍の学生が集まるのは、どのような理由があるのでしょうか?

伊藤:ちょっと意外かもしれませんが、外国籍の人材にとって日本は今、就職に非常に適した環境なんです。海外では通常、大学院を修了しないとポジションが得られない仕事が多くありますし、学部から大学院に行くまでの間に別の専門を学ぶ人もいます。そうして専門性を高めないと仕事に就けないからです。

一方で日本は、APUを学部の4年間で卒業すれば、日本中の名だたる企業にフルタイムで就職できる。高い語学力やコミュニケーション能力を備えた人材にとっては、これ以上なく就職しやすい状況なのです。海外で6年以上学費を払って就職をするよりも、4年で卒業をしてその後のキャリアがほぼ確実に保証されている。これは、APUが日本にあるからこそ実現できている環境と言えますね。

AO入試の鍵は「APUをどう活用したいか」


――APUはさまざまな方法で入試を実施していると伺っています。なかでも、複数種類のAO入試を実施している意図を教えてください。

入試課担当・下之門氏(以下、敬称略):すべての入試に共通しているのは「APUに入りたい人に入学してほしい」ということです。

AOは「お手軽入試」と思われることもありますが、実際にはそうではなく、倍率も年々右肩上がり。APUはもともとかなりユニークな大学なので、学習意欲が高く、APUの環境を積極的に活用したい学生に来てほしいというメッセージを込めてAO入試を実施しています。

――面接や小論文など、選考の際にどのような部分を特に意識して評価しているのでしょうか?

下之門「大学での学習を具体的にイメージしているか」という点ですね。多くの受験生は、高校生までのあいだ学校側が用意したカリキュラムに則って勉強をするので、「何を学ぶかを自分で決める」ということを経験しません。そのため、たとえば入学後の学習や研究のイメージについて面接で問うても「貧困問題を勉強したい」「町おこしに興味がある」という漠然としたレベルでしかイメージをできていない、ということがときどきあります。

先ほどもお話したとおり、APUは非常に国際色が豊かであるため、学びの環境として非常にユニークです。貧困問題一つとっても、さまざまな視点や角度からの掘り下げ方があります。入学後に目標ややりたいことが変わってももちろんいいんです。しかしまずは、入試の時点で「大学で何をどう学びたいのか」をある程度具体的かつ明確にして準備してもらえると、「APUの環境を120%活用してやろう」という気概が伝わってきますし、そのあとの大学生活の充実度はきっと段違いになるはずです。

伊藤:一言で言ってしまえば、「自分の頭で考えられる人」が受かるんです。なので、想定できないような質問にも答えられるよう準備をしておいてほしいですね。正解は問いませんので、質問をされたその場で自分の頭で考え抜く素地があるかどうかを重視しています。考えるための知識と、その考えを伝えようとする意志が備わっているかどうか。 質問に対してどのような捉え方をするのか。そういった部分を意識して日頃から面接の練習をしてもらえればと思います。

――ありがとうございます。お二人ともそれぞれに違った角度から受験生を評価されているのですね。実際、AOで合格するのはどのような受験生なのでしょうか?やはり国際色豊かな環境に適応できるような柔軟性が求められますか?

下之門:いえ、振り返ると、環境適応力という意味での柔軟性はあまり見られていないかもしれません。基本的には「APUをどう活用したいか」を問いかけることが多いので。自分の持っている価値観が偏っているということは、入学して異文化を持つ人々に出会わないと気づけない。

「海外経験や留学経験がない」という学生は、毎年たくさん入学します。我々はAPUを帰国生だけが集まるような大学にしたいのではなく、これからそういう社会に飛び出していきたいという意欲とエネルギーのある人を求めているんです。

伊藤:実際、その2つの要素を備えている人は入学後に間違いなく一番伸びますね。入学時点で英語力が低かろうと、そんなものはコミュニケーションと勉強を通してあっという間に磨けますし、意欲を持って入学すれば価値観も大きく変わります。

よく「APUは優秀な海外の学生を集めている」と言われますが、伸び率で言うと日本人学生がダントツで伸びている、と感じますね。

協同する力と、半径50センチの世界を変える力を


引用元:APU DATA BOOK 2018

――国籍別で入学者の割合を拝見してみると(*1)、本当に各国から学生が集まっていることがわかります。このような環境をどうやって作り上げたのでしょうか?

伊藤:まず、入試の説明会のために我々は世界各地に足を運びます。詳しくは公式ホームページにも載せていますが、説明会でAPUの目指す姿や、学生にどのような人材に育って欲しいと考え、どのような環境を用意しているか、そういったことをお伝えするんです。そうした広報活動を通し、全世界的にAPUの認知度向上に努めています。

もう一つは口コミですね。たとえば、今年度ウズベキスタンから来た学生は65名。ヨーロッパの他の国々と比べると圧倒的に多くの学生が来てくれています。これは、ウズベキスタン人の卒業生の口コミで広まったものです。やはりそうした評判が伝わって各国の学生がAPUを選んでくれるのは、嬉しいものですね。

(*1) APU DATA BOOK 2018 P6,7 参照

――やはりAPU自体が世界そのものを視野として活動されているのですね。これから先、世界ではどのような人材が求められるとお考えですか?

伊藤:これからの時代は、その人自身がいかにユニークであるかがますます大切にされるようになると考えています。日本では、大学卒業後に有名な企業に所属することが目的となっている風潮はまだまだ根強く残っていますが、海外の人々は、自分が人とどれだけ違う価値を持っているのかをバリューとしています。

たとえば、タイ人がAPUで4年間を過ごし、日本語と英語を身につけて、世界各国の友人を作り、そして卒業後に日本の企業で数年働けば、そのあとは世界中の大学院に奨学金付きでどこでも行くことができます。なぜなら、ユニークだから。ユニークであることは、本人のその後の選択肢を広げる上でも非常に大切なのです。

――APUは今後、どのような人材の輩出を目指していますか?

下之門APU2030ビジョンでも掲げていますが、対話を通して異なる文化を持つ人たちと協同できる人を育てたいと考えています。

APUは国際系大学であるため、あえて無宗教の立場をとっています。そうすることで様々な宗教文化の人々が入ってくるため、「スタンダードな考え方」というものは学内に存在しない。そうした環境下では、自分の立ち位置や価値観の在り方が揺らぎますし、時には激しい衝突も起こります。カフェテリアで日韓問題について日本人学生と韓国人学生が激論を交わしていることなんてことも。

だからこそ、そうした環境で他人とどう協同するか――大学生活を通してその術を身につけてほしいと願っています。

伊藤:世界で活躍できる人材を、と掲げつつ、「世界を変える」という漠然とした大きな目標を持つよりも、自分の半径50センチ以内を少しずつ着実に変えていけるようになってほしい、と思っています。

世の中にはまだまだたくさんの課題や不条理が山積しています。それらに違和感を覚え、課題を発見し、一歩ずつ状況を変えていく努力ができること。その積み重ねが、長い時間と世代を経てゆくゆくは世界を変えていくことにも繋がるはずです。まずは、自分の目の前にある問題を解決するために、自分は何にどう貢献できるのか。そうしたことを考えて実行できる人を輩出していけたら、と考えています。

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洋々の小論文トレーナー兼メンター。編集と執筆もしています。かぼちゃと春と動物が好き。